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望月杏奈試論 ー揺らぎ・境界・無限ー

ども。

 

始まりましたね。新イベント、[dan’s l’obscurite]。「暗闇で踊る、」とかに訳せるんでしょうか。特に曲が素晴らしい。ダークロマンスとかわかってるじゃん。杏奈かわいい。
久しぶりにミリスタのMV見たんですけど、 めっちゃレベル高くなってますね。
アニメーションのクオリティであったり、 ダンスの動きであったり、演出であったり。
この曲、ライブで再現するの苦労するだろうなぁ。
 
早速脱線しました。特技は脱線です。

 

本題。
 

 


望月杏奈とは誰だろうか。
 
詳しいプロフィールなんかは、ミリシタ内だったり、 ニコニコ大百科なりに書いてあるんですけど、ここでは最近でたfestyさんの記事を挙げておきます。
http://festy.jp/web/posts/7788

かわいいポイントなんかは上記のポイントで見つけてほしいんですけど。軽率にミリシタに触れてくれても良いんだよ。

望月杏奈は二面性をもつかわいいアイドルとして知られているかと思います。
 
ライブやお仕事での、ハイテンションなonの姿。
日常や待機中の、ゆる引きこもるoffの姿。
 
どちらもかわいいですよね。 多分私が一番最初に好きになったアイドルです。
ソロ曲は「Happy Darling」「VIVIDイマジネーション」「ENTER→ PLEASURE」。発表順。
ほかユニット・デュエット曲多数。ミリオンは曲が良い。曲のミリオン。聴いてください!!!!
 


というわけで、 ソロ曲を手掛かりにして望月杏奈に迫って行こうと思います(強引な導入)。
資料上の問題なんですよね。 誕生日や好きなものから迫るわけにいかんしな。

ミリオンライブ時代のイベントストーリーとか、 見れるサイトがあったら誰か教えてください。 ついでに、ミリシタが動作するレベルのスマホを買ってくれる方も募集しています。スマホが壊れました。
 

 

 


ソロ曲から見る「望月杏奈」像の変化。

 

出た順番に、変化を追います。

HappyDarling、VIVIDイマジネーション、ENTER→PLEASUREの順に。初期→中期→後期。

キャラを決める一曲目、方向性を決める二曲目、よりキャラを強化する三曲目。

 

確か彼女、ドラマCDで、onの姿は他のアイドルを研究して得た、あくまでキャラクターみたいなことを言ってた覚えがあるんですけど。 あくまで素はoffです、みたいなスタンスで。
「Happy Darling」なんかもそうですよね。 恋愛に対しても研究で対応する努力家の側面、 年齢相応でハイテンションなサビ、垣間見える「本当の私。」

巷の 14歳像も、こんな感じなんじゃないかと思います。 恋に恋して自分を探す14歳。やみくもに恋の予習とかしちゃう。
サビ部分でレスポンス?してる部分も興味深いですよね。() の中に書いてるやつ。
歌詞載せるの怖いから載せないんですけど。 二面性アピールっぽくて。

 

 

 

キャラを固めるための一曲目。onとoffのあるキャラクター性と、そのonの姿が強調される。
 

 

 


続く「VIVIDイマジネーション」で、 この望月杏奈像に若干の変化が見られます。一年後だっけ。
初手で〈私〉が目覚めてて笑いました。 めくるめくアイデンティティの目覚めへようこそ。 めっちゃ思春期じゃん。終わりなき自分探しの旅へようこそ。 それはともかく。
わざわざ言うまでもなく良い曲です。聞いてみてください。さて。
 
特筆すべき点がいくつかあります。一つ目は、1番(Aメロ?) の歌詞。

 

 

気づく。実はこの子、感情豊かなんだ。顔に出さないだけで。

「HappyDarling」では、 表のonのキャラが全面に押し出されていて全然わからなかったけど、 当然ながら、大元はoffの杏奈ですからね。
Offの時にも、onの時と同じくらい感情豊かなんだ。でも、 その感情をどう表に出すか、わからないでいる。そんな人物像。
3番?Cメロ?の歌詞(I’Wont…部分)が、 特に彼女のキャラを方向付ける節でした。
 
Offの姿の自分へと、興味関心を寄せる引力。 「アイドルでないときの私も見てよ」、と。
 
だからこの子、頭まで隠すようなパーカー着てるんですね。 露出するアイドル衣装とは対照的に。 制服の時でもカーディガンとか着てるしな。

 

 

整理。

1曲目で固めたキャラの、進むべき方向を決める2曲目。 彼女が選んだのは、対外的な仮面としてのonの姿と、 本当の姿としてのoffの姿のさらなる分化・乖離させないための接続でした。 普段思っていても本当はできないことを、onの姿にゆだねて。 きわめて感情的に。表出させる。そんなキャラクター。
世俗で言う、対人関係の「キャラクター」が、 そのキャラクターとしてのふるまいを求められるのに対して= そのキャラクターを逸脱したらハブにされるのに対して、

 

 


杏奈望月は違います。
抑圧されるoffの姿。したいことをするためのキャラクター、onの姿。非常に境界が曖昧になって参りました。
Onはあくまで対外的な仮面だけど、 本当にしたいことができるのもonの姿。
Offは本当の<私>だけど、 そのキャラクターに囚われるがゆえに、思い通りに行かない。
 
余談。
これ、めっちゃ昨今のヴァーチャルアイドルVtuberに 似てると思うんですよね。杏奈にとって、onで挑むステージは全てヴァーチャルの場なんです。 趣味のオンラインゲームと変わらない。これは、どの曲の歌詞にも、 ヴァーチャル(チャット?)ならば感情を表に出した素の= ハイテンションのキャラクターとしてふるまえることが示唆されて いることから伺えます。二次元アイドル界隈において、 望月杏奈は一番ヴァーチャルなヴァーチャルアイドルなんだ。 ヴァーチャル内のヴァーチャルアイドルって、 なんか入れ子構造みたいですね。V tuberの存在論
 


3曲目。

結論。さらに、強化と分化が進みました。on/offのキャラクターの。
ステージでなら、素直にふるまえるんですって。Onとoff、実は転倒してない?
2曲目で方向付けられたキャラクター性の、 on/offの分離を、強化するような歌詞が続きます。
自分にカギをかけて、現実からは退いていくoffの自分。 それでも動いている感情。
それが噴出するような、onの姿。魔法、夢、無敵。
2曲目では「パスワード」とだけ書かれていた、onとoffを切り替えるスイッチは、
環境、感情、音楽、に加えて、「キミの視線」 と具体的に書かれます。
ここらへん、言いたいことがたくさんある。「見られて、 私が変わるの」が「まなざし」だからね。 他者の視線が私を規定するとか、私の好きなヤツじゃん。 それはともかく。これはあとでちゃんと書きます。
 


2曲目~3曲目の時期だったと思うんですけど、仕事でoffの姿をだしてるカードが増えてきましたよね。意識的にoffの姿をコントロール出来るようになってきた、みたいな説明が付いてたと思います。具体的にはくのいち姫とか、 お天気お姉さんとか。懐かしや。写真は無いので調べてみてね。

 

 

 

 

実は、望月杏奈について語るうえで、 このことが一番大事なんだ。
 

 


突然の話題転換。 いい感じに望月杏奈論にするから安心して読んでください。
 

 

「素」について。

 


私たちには、人のオンやオフを区別し、 そのなかでもオフの姿を求める欲望があります。
「素の姿」。ドッキリが流行ったり、 公人のプライベートが執拗に追いかけられるのもこの心理ですよね 。「本当のあなた」「素」が知りたいという不断の欲望。

この物言いだとちょっとはてなマークなんですけど、「相手のことが知りたい」、と言い換えたらわかっていただけると思います。友人関係、 恋愛関係、人間関係。なにごとも「わかる~」 が始まりですからね。
 

 

「分かる」の暴力について。

 

 


日常生活における、この「分かる~」は、 限りないまでに暴力的な暴力です。これははっきり断言できます。
他人を、自分の理解できる枠に加工し、歪めてしまうことを、 暴力以外の何と呼びましょう。
私とは根本的に違い、私の範疇には絶対収まらない他者。

それを、 私の世界に、私の観測から再構成して再現する。その似姿を、 目の前の他者と勝手に同定して、「分かる」。
かっこいいこと言ってみたかったんです。 でもわかりにくい自覚はあるので、もう少し言い換えます。
 

「あなたの素の姿を見せて」について。

 


ドイツ語では「了解」と「包摂」は同じ言葉です。わかることは、 相手を包み、分解し、自分の世界へ適合するよう作り替えること。 それは、相手を一人の人間としてではなく、一つの対象・ モノとして扱うこと。

言い換えるなら、「分かる」ことは、 相手をモノとして<所有>すること。<他>を<同>に囲い込むこと。 全体主義的。
だから最近の共感ブーム嫌いなんですよね。誰かに「共感」 したとき、それは、現実の相手から一番遠ざかった時だから。 一番すれ違った時だから。 自分に惚れると書いて自惚れるとはよく言ったものですね。 分かる自分に惚れるな。
 

 

 

この話を、望月杏奈に接続します。
 
望月杏奈、そんな欲望の対象になるような素・offの姿を初手で曝け出してくるの。すごいですよね。この子。気になる人のOffの姿を垣間見ようとして人がどれだけ努力することかわからんのにね。この点で、望月杏奈は、星の数ほどいる二次元アイドル業界でも特に類を見ない特別なアイドルです。なぜかって、実際にそこらへんにいる思春期学生が「 本当の私をわかってよ!!!」とかいうのとは訳が違いますからね。

 

 

 

そう、このoffの姿すらも、キャラである、という点において。2〜3曲目の時期にそれが分かってきた。
 

 

幻惑する望月杏奈。

不断に「本当の私」を求められ続ける他者との世界において、 望月杏奈は戦略的にふるまいます。
それは、私たちのまなざしに対して、「onとoff/キャラと素」を先に提示し、 慎重に使い分けるという方法において、です。 それだけでは飽き足らず、さらに、戦略を重ねます。
それは、onとoffの境界を揺らがせる、という方法です。本来 onとoffで使い分けられていたキャラクター像は転倒し、 (仮想のそのまた)仮想の望月杏奈像を作り上げます。私たちはそのoffの姿に引き寄せられていきますが、 その境界は揺らぎ、幻惑され、 私たちは永遠に望月杏奈にたどり着けなくなります。 幻を追いかけさせ、常に現実の自分自身は退隠する望月杏奈。
 

 


望月杏奈は、絶対に分からない。
 望月杏奈には、辿り着けない。

 


こうも言えます。
「VIVIDイマジネーション」では、onの姿とoffの姿はコ インの裏表のように考えるべし、と示唆されていましたが、 それが罠です。現実の望月杏奈はコインですらない。しかも、 容易に表と裏を反転し、 その反転そのものに注目させてしまうことすらする。私たちは、 永遠に仮想のoffの姿を追いかけ続ける。


こうも言えます。これ友達が言ってました。「2つの服、 2つの縁の間に見える肌の間歇。 誘惑的なのはこのちらちら見えることそれ自体である。 さらに言い換えれば、出現と消滅の演出である(ロラン・バルト) 」。On/offの反転、出現と消滅、誘惑と目眩まし。


「まなざし」について、ちゃんと書きます。

特に「まなざし」という言葉を使うときには、「見ること」が、相手に「誰かに見られている」 ことを意識させ、相手の在り方を変化させる外的な(暴) 力の一つであることを表します。そして、私達は、存在する限り他者のまなざしから逃れられません。

 

そんなまなざしすら、 彼女には届かない。まなざしが写すのは、彼女の作り出した幻想。 私たちは、 素の姿をさらけ出す望月杏奈に親しみすら覚えながら引き寄せられていくものの、それは想像的な・ ヴァーチャルな望月杏奈にであって、 望月杏奈そのものにではない。望月杏奈は、常に現実から退隠し、 引きこもり続ける。

そんな一つの存在論
 
私たちにわかるのは、Imagination Girl(VIVIDイマジネーション) としての望月杏奈であって、 現実の望月杏奈にはたどり着けない。

 

無限の望月杏奈。
 

 


レヴィナスに影響されきった感がすごい。
この望月杏奈論はそのまま、私たちが現実に、 他者と接するときの方法の写しです。onとoffを、キャラと素、に置き換えて読んでいただけると、そのまま現実でのコミュニケーション論になります。すごい。


私たちが分かってしまうのは、あくまでヴァーチャル= 仮想の他者であって
現実の他者は、私の住む私の世界の外から到来する。(=私たちが認識し、構成するのが先ではなく。)そして、 一瞬だけ現れて、 私たちが理解しようとするときにはすでに離れており、 不断に退隠し続ける。そして、その「他性」によって、 私に痕跡を残し、<私>が変化するきっかけを与える。


「まなざし」は私を制限する暴力ですが、同時に、 他者のまなざしを受けることで、「私」が分かっていきます。「 私というものそのものが、 私ならざる者との関わり合いにおいてしか、 何者であるかを常に事後的にしか発見できない。 そのときに私自身の自己規定を可能にする他者がいる。」( 内田樹)。そして、望月杏奈は、関わらないことを選んだ。仮想の仮想を現実と見誤らせることによって。
 


余談。

最初、 ファムファタールとしての望月杏奈を書く予定だったんですよね。 私の欲望を喚起し続け、 それが破滅するまでコミットさせ続ける存在として。 勉強不足で書けなかった。残念。
 

 

末文。
最初に「望月杏奈」とは誰だろうか。と問いかけ?ことから始めました。
この記事を読んでいただけたなら、 私たちがこの問いに答えられないことが分かっていただけたと思う 。望月杏奈がアイドルであり、女性であり、onとoffがあり、 そう答えたところで、それは、「望月杏奈とは何か」 と言う問いの答えにしかならないからだ。望月杏奈が何か? はわかっても、「望月杏奈が誰か」はわからない。それが、「他者」 であり、私とあなたの関係である。
 
我々が望月杏奈から学ぶことは多い。

 

 

参考資料

 

 

 

全体性と無限 (上) (岩波文庫)

全体性と無限 (上) (岩波文庫)

 
実存から実存者へ (ちくま学芸文庫)

実存から実存者へ (ちくま学芸文庫)

 
レヴィナス入門 (ちくま新書)

レヴィナス入門 (ちくま新書)